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飛騨高山の造り酒屋が「ウイスキー蒸溜所」を設立へ!舩坂酒造店社長インタビュー【後編】

2022年3月。『高山市の舩坂酒造店が、高根町(旧高根村)にある廃校を利用して新たにウイスキー蒸溜所を作る』そんなホットなニュースが飛騨を駆け巡りました
その後、スタートした「飛騨高山蒸溜所プロジェクト」のクラウドファンディングでは、一日にして1000万円を集め、10日で3000万円を突破。地元だけでなく全国のウイスキーファンからも支援が集まり、大きな反響を得ています。
今後は施設を整備して、2023年から蒸溜を開始し、2026年のウイスキー発売を目指す予定です。
今回は、飛騨高山蒸溜所の発起人である舩坂酒造店社長・有巣弘城さんに、蒸溜所設立に至るまでのストーリーと飛騨高山への郷土愛を語っていただきました。

前編はこちら

ご縁に導かれて富山県の三郎丸蒸留所へ

コロナ禍で暗中模索をしていた頃、私は「日本酒をなんとかしたい」という思いで奔走していました。全国にある酒蔵を回り、自ら現場に飛び込み、新しい日本酒を作るための研修も受けてきました。

舩坂酒造店

また、その一方で、高山に来られないお客さまのために、ECや海外輸出の道を新たに切り開こうと考えました。

そこで、EC・海外輸出の専門アドバイザーを探し、中山雄介さん(後に蒸溜所プロジェクトのメンバーになる)と出会ったのです。早速、日本酒の販売に関わっていただきました。

その中山さんのご紹介で、富山県砺波市の若鶴酒造さんにご縁を繋いでもらいました。

若鶴酒造さんは、日本酒の酒蔵でありながら、クラウドファンディングで三郎丸蒸留所を再興されて、今は日本酒と共にウイスキー造りもしていらっしゃいます。以前からすごい会社だと噂には聞いていました。

しかし、当時の私は、ウイスキー造りに関しては全く関心がなく、蒸溜所に興味はありませんでした。あくまで飛越(飛騨と越中)で日本酒のコラボレーションが出来ればいいなと考えていました。

ところがです。

若鶴酒造さんを訪問し、日本酒のことでお話をいろいろさせていただいた後、若鶴酒造の五代目で三郎丸蒸留所のマネージャーである稲垣貴彦さんから、蒸溜の施設も見学させてもらうことになりました。

これが三郎丸蒸留所…しいてはウイスキー蒸溜との出会いでした。

三郎丸蒸留所

初めて見た三郎丸蒸留所は、まるで昔の学校のような風情で、とても情緒ある建物でした。稲垣さんの曾祖父さんが造られたウイスキー蒸留所です。

この時、稲垣さんは三郎丸蒸留所の建物の中で、ご自身の思い出話を語られました。それは、老朽化が進みボロボロだった蒸留所の中で、彼の曾祖父が作った50年前のウイスキーを見つけ、それを初めて口にしたというお話でした。

曾祖父が残してくれた古いウイスキーを味わった瞬間、「ひいおじいちゃんとつながった気がした」…と。

その瞬間、私の身体に電撃が走りました。以前、しぼりたての日本酒を初めて飲んだあの時と同じ衝撃でした。

感銘を受けたと同時に、「私が探していた新しい扉はこれだ」と感じました。

日本酒とは対極の酒「ウイスキー」に想いを託す

先ほども申しましたが、弊社の日本酒は鮮度が命のフレッシュビジネスです。

そのため、コロナ禍だったこの2年間は、日本酒にとっては価値が下がる苦悩の2年間でした。

ところが、ウイスキーに関しては、この2年間は、たとえ売れなかったとしても、酒の価値が上がる2年間だったのです。

「同じ2年間なのに、なんということが起きているんだ!」と驚きました。

弊社の日本酒の場合、フレッシュビジネスなので、作ったものがすぐにキャッシュとなってくれます。これはビジネスとしては非常に強いです。

一方のウイスキーは、エイジングビジネスです。

これは、将来どうなっていくかわからないものにお金を投資して、寝かせて、売れるか売れないかもわからないなかを、価値を上げながらじっくり待ち続ける…というものです。

三郎丸蒸留所で使用されているウイスキー蒸留器・ZEMON。飛騨高山蒸溜所でも導入する予定です。

実は、今までの私は、こうしたエイジングビジネスには「手を出してはいけない」と思っていました。しかし、今回のコロナで窮地を体験し、「やっぱり必要だ」と気づかされたのです。

日本酒はすぐに消費しなくてはいけないので無理ですが、ウイスキーなら、今、私が作れば、もしかしたら20年後の未来の誰かに託せるかもしれません。そして、そのウイスキーで得たお金をもとにして、高山の「宝」を残せるかもしれません。

私は、この蒸溜ビジネスに賭けてみようと思いました。

このご縁がきっかけで、稲垣さんと意気投合し、飛騨高山蒸溜所プロジェクトを支えていただくことになったのです。

候補地を求めて高根町へ

高根小学校との出会いも、今思えば不思議なご縁でした。

ウイスキー蒸溜所を作ると決めた私は、候補地をいろいろ探し回ったのですが、ここだと感じる場所がなかなか見当たらず、困っていました。

そんな時、地元の知人に、「どこか、いい場所はないかな?」と何気なく相談してみたところ、その知人が廃校になった旧高根小学校のことを教えてくれたのです。

大自然に囲まれた旧高根小学校

高根と聞いて、私が最初に思い浮かんだのは、昔、高山市に合併される前の旧高根村で開催されていた『日本一のかがり火祭り』でした。

当時、アリスグループのレストランが、かがり火祭りの会場でカレーライスのテント販売をしていたため、当時、子どもだった私もその手伝いに毎年行っていたのです。

そんな昔の記憶から、高根町は市街地からかなり遠いイメージがあり、最初は候補地に入れていませんでした。

しかし、知人の話でピンときた私は、早速、高根町へ向かいました。

道路が整備され、昔と比べるとアクセスが良くなっていることに驚きました。

旧高根小学校との運命的な出会い

初めて訪れた高根小学校は、自然に囲まれてダムにも近く「これはすごい」と思いました。

校舎の中に入ると、黒板に子どもたちのメッセージがそのまま残り、教室も体育館もきれいな状態でした。長い間、地域の人が大事にしてきた学校なんだなと感じました。

閉校当時のまま残されている教室

順番に校内を歩いていたとき、校長室を見つけました。近寄って最後の校長先生の名前(砂田明伸さん)を見たところ、なんと、舩坂酒造店のすぐ近所の方だったんです。ビックリしました。

さらに、この日、高根から帰ってきて、(舩坂酒造店がある)上三之町を歩いていたら、小学校に名前があった元校長の砂田先生が、偶然にもひょっこり姿を現したんです。これにも驚きました。

「えっ?!」と思いながら「先生、高根小学校で校長をしていたんですか?」と声を掛けると、「何で知っとるんや」と言われまして(笑)、そこから、ウイスキー蒸溜所の話になり、先生は「そりゃ是非、あの校舎を使ってくれ!私はあの学校にすごく思い入れがあるんだよ」と仰ってくださいました。

こんな流れから、旧高根小学校に蒸溜所をつくると決めたのです。

ウイスキーという「新しい扉」を開いて

ここまで順風満帆でやってきたように見えるかもしれません。

ですが、実際にはいろいろな課題が出ていますし、困難にも何度かぶち当たりました。ウイスキーという新しい扉を開いたものの、日本酒との違いに驚き、扉を閉じようかと思ったこともあります。

しかし、おかげさまで良いご縁に恵まれて、そのご縁に導かれるようにして、ここまで突き進んでまいりました。

有巣さん(前列左)と飛騨高山蒸留所プロジェクトのメンバー

本当の大変さは、今から始まると思っています。

ウイスキーブームにのって全国に次々と蒸溜所が設立されています。当然、競争も激化してくるでしょう。

そのなかで、どう飛騨高山ウイスキーを差別化して販売していくのか…。

製品ができたあとから、ビジネス面での真の苦労が生じてくるだろうと覚悟しています。運命や使命では片付けられない、ここからが本当のスタートです。

飛騨高山ウイスキーの見本。2026年販売を目指します。

実は、4月4日の記者会見までの間、市役所との交渉や会見のセッティング、クラウドファンディングの準備、建物の設計施工に至るまで、私が一人でやっていたので、作業的・体力的にかなり忙しくて大変でした。その間、酒造店のことは酒蔵スタッフが支えてくれました。

そんなスタッフたちも、皆様からの反響を受けて感動したと話していました。今や、この蒸溜所プロジェクトは、私だけでなく多くの人々の「夢」へと大きく広がりつつあります。

たくさんの期待を背負っていますので、頑張らなくてはいけないと思っています。

《最後に》飛騨高山の皆さまへメッセージ

高山市は、過去の先人たちの尽力によって、国内外から多くのお客様をお迎えし、観光業で食べていける街へと発展しました。しかし、今再び、高山の新しい価値を生み出し、郷土の宝を守らなくてはいけない大きな節目に来ていると感じています。

現在、コロナの影響で高山市全体で元気がなくなり、非常に淋しい思いをしていますが、この蒸溜ビジネスが、飛騨高山のターニングポイントとなると良いなと考えています。

もちろん、地域の人々に「誇り」として認めてもらえるものにしていきたいと思っています。アリスの蒸溜所ではなく、『我らが蒸溜所』と思っていただき応援してもらえたら、これほど嬉しいことはありません。
「地域の宝」として支えていただけたら幸いです。

【編集後記】
日本酒の仕事のかたわら、ウイスキーの勉強をしているという有巣さん。
「ウイスキーは樽の中で呼吸するんですよ」
樽(木)と原酒が共に呼吸をしながら、じっくり時間をかけて熟成していくため、ウイスキーは『自然環境と共に成長していくお酒』とも言われているそうです。
飛騨の風土はどんな味と香りを生み出してくれるのか、とても楽しみです。
この蒸溜プロジェクトが、私たちが暮らす飛騨の未来のために、次世代へとつなぐ希望のバトンになりますように…。地域への想いがたくさん込められた飛騨高山蒸溜所を、これから温かく見守り応援していきたいと思いました。

舩坂酒造店
《住所》岐阜県高山市上三之町105番地
《電話》tel:0577-32-0016
《営業時間》9:00〜18:00(急な営業時間の変更もございます。)
《ホームページ》https://www.funasaka-shuzo.co.jp/

《飛騨高山蒸留所クラウドファンディング》
https://www.makuake.com/project/whisky-hida/