2022年5月に開店した名田町にあるバー「結(ゆう)」さんへ取材してきました。古民家を改装した素敵なお店ですが、中心地からは少し外れた立地のような…?
なぜこの場所にオープンしたのかその理由や、お店のコンセプト、こだわりのメニューなども聞いてきました!
格式高いイメージを覆したい、所詮「BAR」の空間
──お店をオープンするきっかけを教えてください。
店主 佐野さん:ここを開く前は国分寺の近くでパブという形態で営業していました。そこも自分でつくり、非常に思い入れもありました。しかし、この店は持ち物件という事もあり、より自由に自分の思いを表現できる。また、お客様の来店動機として偶然通りかかった方に、お越しいただく事も非常に大事です。ですが立地に頼らず、わざわざでも目指して行きたくなるような店をつくってみたかった。そういった考えのもとつくられた店で、お客様をお迎えしたいと思いオープンしました。
──日本人はバーに対して、敷居が高いイメージを持ちがちですよね
そういったイメージを持たれている人は多いです。でも、むしろそう考えている人にこそ来て欲しいです。夕食前にフラッときて、スッと一杯飲みながら「間」を持ちそして夕食へというような。バーだからといって肩肘張らずに、もっと気楽にカフェのような感覚で来て欲しいです。
──どういうお店にしていきたいですか?
変なたとえですけど、お客様に「旅行」するような感覚で来てほしいです。旅行するときって目的地がありますが、そこに行くだけが目的じゃないですよね。その道中で「どんな出会いがあるかな」とか「どんな風景が見れるかな」とか考えるのも醍醐味。それってお店も同じだと思うんです。
お店に来るまでに「仕事でちょっとミスしちゃったなぁ…」「ここにこんな道があったんだ」なんて考えている時間も含めて、そのお店の存在価値だと思うんです。その「時間」を含めて楽しんでほしいという想いがあります。
それに言い方難しいんですけど、バーなんて所詮ただの「バー」なんですよね。ドリンク(カクテル)はもちろん大事ですが、バーにおいてツールのひとつだと考えています。大事なのはここへ来た方が、嫌なことがあってもふっと忘れられたり、久々に合う友人同士が心置きなく会話できる場所であったりすること。そういう「空間」を提供しているのだと思っています。
いつもの日常をちょっと変える「時間」と「空間」を提供できる。そういうお店にしたいです。
コンセプトは「日本版スピークイージー」
──中心地からは少し離れていますが、なぜこの場所でバーをやろうと思ったのでしょうか?
あそこに行こうと思って貰えるお店にしたいんです。さっきの旅行の話でも触れましたけど、少し離れたところにあると、そこに行くまでの時間が生まれますよね。その時間を楽しんでほしいという想いがあります。それがこの場所を選んだ理由のひとつです。
それに中心地からは意外と歩けない距離でもないんです。高山駅から歩いて15〜20分くらいなので。その道中を楽しみながら日常生活から少しずつ離れて、お店に来てほしいです。
──古民家を改装したバーというのも珍しいですね。
実はコンセプトがひとつあって、それは「日本版スピークイージー」です。
スピークイージーとは?
アメリカ禁酒法時代にもぐり営業をしていた酒場のこと。こっそりと酒を注文するという意味がこの言葉の語源。禁酒法廃止前年の1932年には、全米に22万軒近くあったという。服屋、床屋、薬局、さらには葬儀屋の奥、覗き穴つきの地下室などで営業していたとされる。
一言でいうなら、アメリカ禁酒法時代にあった隠れ家的なバー。当時、法の目をかいくぐるために作られたものです。その雰囲気を日本で、この高山でやってみたいと考えてできたのがこのお店です。
──たしかに、外観からは想像もつかないようなお店ですね。
扉を開けたときに、ちょっとした驚きがあったりする。そうやって空間そのものを、お客様に楽しんで貰えるお店にしたいんです。改装作業も結構自分ひとりでやっていて、そういうのも楽しみながらやっていますね。自分が楽しむことも大事にしています。
メニューがない。食材へのこだわり
──こだわりのメニューなどありますか?
こんなことを言うと、またバーを敬遠されそうですが、実はメニューを置いていないんです。お客様のその日の気分や好み、希望に合わせたお酒をお作りしています。土地柄、車で来られる人も多いのでノンアルコールもお出ししています。
こだわりについていうと、原材料は「地産地消」を意識しています。地元のものを使うとやっぱり想いが乗っかるような感覚があって、そのドリンク一つひとつにも愛着が湧くんです。
──直接、農園に行かれたりもするんでしょうか?
そうですね、直接農家の方にお会いしてお話を聞くことは多いです。生産者さんを調べて連絡を取って、会いにいくこともあります。もっと言うと、実際に農作業をさせていただくこともあります。そうすることで食材との接し方も変わってくると思うんです。どんな人が作っているのか、どうやって作られているのかを知っていると違いが出てきます。
例えばトマトひとつとってみても、同じ品種でも個体によって違いがありますよね。それに採れてから何日経つのか、その日の気温でもトマトの状態は変化していきます。その日その時の状況に合わせて、扱いを変えるようにしています。
食材を知って、お客様のことを知って、その時の最高のものをお出しできると嬉しいです。いまだに反省することも多いですけど。あの場面ではもっと違うお酒だったかなとか、もう少し酸味を効かせたブレンドにすればよかったなぁなんて。そこがやっていて面白いところでもあります。
日常のなかの非日常を提供したい
──最後にメッセージをお願いします。
日常のなかの非日常を提供できたらいいなと思っています。日常とほんの少し切り離して、普段は感じられないことにも時間を使ってもらえるような。それでいて楽しいなとか落ち着くなと思ってもらえるお店にしたいです。また、生産者の方々が思いを込めてつくってくださった農作物の思いを引き継いで、カクテルという形に変えてお客様に提供できればと考えています。
バーなんて所詮バーと語ってくれた佐野さん。敷居が高いと感じている方にこそ来てほしいとのことですので、気軽に立ち寄ってみてください。その日のことを思い返しながら、のんびりと歩いて行ってみるのもいいかもしれませんね。
結(ゆう)
住所:高山市名田町1丁目49-3
営業時間:15:00〜22:30(ラストオーダー 22:00)
定休日:日、月曜日
電話番号:0577-70-8451
SNS:Instagram
駐車場:無(駐輪場は有り)
予約に関する注意事項や詳細:1グループの入店は4名まで
席料(チャージ):無し
カクテル ¥850〜